降りかかる霰の酒のかん夜かな
松永貞徳
霰の降りかかる冬の寒い夜に、身体が温まるようにと霰酒をかんをしながら飲んでいることであるよ。
季語:霰・冬
さればここに談林の木あり梅の花
西山宗因
されば、ここに俳諧仲間が集まって俳諧の談義に花を咲かせるのにもってこいの梅の花の木があるよ。
季語:梅の花・春
木枯らしの果てはありけり海の音
池西言水
ごうごうと吹きすさぶ木枯らしがおさまってみると、遠く海の方から音がするが、木枯らしは海に入っていったのだな。
季語:木枯らし・冬
秋風の吹きわたりけり人の顔
上島鬼貫
秋風がそよそよと、野道を行く人の面を吹きすぎることであるよ。
季語:秋風
目には青葉山ほととぎす初鰹
山口素堂
初夏には、目にはみずみずしい青葉若葉が、耳にはほととぎすの鳴く声が聞こえ、味覚としてはおいしい初鰹が賞味できる。
季語:青葉、ほととぎす、初鰹・夏
越後屋に絹さく音や更衣(ころもがへ)
榎本其角
更衣の季節になり、越後屋では、そのために仕立て者をする人がつめかけ、絹の布をさく音がさかんにする。
季語:更衣・初夏
下京や雪つむ上の夜の雨
野沢凡兆
状況では雪が降り積もっているが、下京では人家も多く、明るい灯が流れ、積もった雪の上には、夜の雨がふっていることだ。
季語:雪・冬
十団子も小粒になりぬ秋の暮
森川許六
東海道宇津の山の名物の十団子も世のせちがらさとともに、だいぶ小粒になった。秋の暮の寒さとともにわびしさがひとしおだ。
季語:秋の暮
梅一輪一輪ほどのあたたかさ
服部嵐雪
寒梅のつぼみが1つひらいた。その可憐な一輪を見つめていると、冬といいながら、近づいてくる春のあたたかさを感じる。
季語:寒梅・冬
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