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俳句の意味


松尾芭蕉


枯枝に烏のとまりたるや秋の暮

秋の暮れ方、すっかり葉を落とした木の枝に、烏が来てとまっていることであるよ。
季語:秋の暮

 

海くれて鴨の声ほのかに白し

海は日が暮れてもの皆見えなくなっていく。鴨も鳴き声しかわからなくなってきたが、その声はほのかに白くさえ感じられる。
季語:鴨・冬。

 

古池や蛙飛びこむ水の音

しずかによどんだ古池に、突然その静けさを破り、帰るが飛びこむ音がする。しかしそのあとはまたひっそりとしずまりかえる。
季語:蛙・春

 

山路来てなにやらゆかしすみれ草

春の山道を越えてきて、ふと道端に目をやると、かれんなすみれが咲いている、なんとなく心引かれることであるよ。
季語:すみれ・春

 

閑かさや岩にしみ入る蝉の声

ひっそりとしたしじまの中に、突然、ジーと蝉が鳴く。その鳴き声は岩にしみ入って、あたりには再びしずかさがもどる。
季語:蝉・夏

 

初時雨猿も小蓑をほしげなり

初時雨の中を蓑を着て山越えしていくと、途中、猿が時雨に濡れている。小さい蓑でもほしそうであるよ。
季語:初時雨・初冬

 

この道や行く人なしに秋の暮

秋の夕暮れの中に、行く人もない道がはるか遠くまで続いている。俳諧の道も同じように、暮れやすく孤独なものであるか。
季語:秋の暮

 

秋深き隣は何をする人ぞ

秋も深まった。旅先での宿泊なので、隣の人はどういう人か知らないが、いったいどんな生活をしている人であろうか、人恋しい。
季語:秋深き・秋

 

旅に病んで夢は枯野をかけ廻る

 旅に病みふしていると、夜ごとに見る夢は枯野をかけまわっている夢であることだ。
季語:彼の・冬

 

 

 

 

与謝蕪村


畑うちや法三章の礼の下

畑をたがやしていることであるよ、法三章の立て札のそばで。
※法三章:間の高祖が秦の苛政を改めて、のんびりと農事に従事している農民の姿。春の田園の風景。
季語:畑うち・春

 

白梅や墨芳しき鴻ろ館

庭には白梅が咲き、香っていることであるよ。室内では、唐の貴賓が何かを書いているとみえ、墨の高雅な香りがただよっていることだ。鴻ろ館には。
季語:白梅・春。

 

五月雨や大河の前に家二軒

五月雨に水かさを増した大河が濁流渦巻きつつ流れていく。その岸辺に小さな家が二軒今にも押し流されそうに立っている。
季語:五月雨・夏

 

愁いつつ丘にのぼれば花いばら

淡い郷愁をいだいて、とある岡にのぼれば、そこには茨の花が咲いている。何か心はいっそうやるせない気持ちになることだ。
季語:花いばら・夏

 

鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな

鳥羽上皇の御所の方へ五六騎の武装いかめしい武者が馬を走らせて行くが、折から強い風が吹きまくっている時であるよ 。
季語:野分・秋

 

春の海終日のたりのたりかな

春の海は、一日じゅうのたりのたり、と波がうねっていることであるよ。
季語:春の海・春

 

 

 

 

小林一茶


これがまあつひのすみかか雪五尺

これがまあ、自分の生涯最後のすみかとなるのか、雪が五尺も深深と降りつもっているこの家が。
季語:雪・冬

 

やせ蛙まけるな一茶これにあり

やせ蛙よ負けるなよ。一茶がここにいておまえの応援をしているぞ。
季語:蛙・春

 

椋鳥と人に呼ばるる寒さかな

むくどりと人に呼ばれると、そう呼ばなければならない貧しさが身にしみて、寒さもひとしおであるよ。
季語:寒さ・冬

 

涼風の曲りくねつて来たりけり

自分の家は裏長屋の奥で、暑いさなかに吹く涼風もまともには吹いてこず、曲りくねってようやっとすこしばかりきたことだ。。
季語:涼風・夏

 

めでたさも中位なりおらが春

正月で、世間の人はめでたいめでたいと言っているが、おれはどうかというと、そうよくもなければ、ひどく悪くもない。まあ中位のところである。
季語:春・春、正月

 

ともかくもあなたまかせの年の暮れ

どうなるものかわからない、何もかもあなた(=阿弥陀様)任せの年の暮であるよ。
季語:年の暮れ・冬

 

 

 

 


降りかかる霰の酒のかん夜かな

 松永貞徳
 霰の降りかかる冬の寒い夜に、身体が温まるようにと霰酒をかんをしながら飲んでいることであるよ。
季語:霰・冬

 

さればここに談林の木あり梅の花

 西山宗因
されば、ここに俳諧仲間が集まって俳諧の談義に花を咲かせるのにもってこいの梅の花の木があるよ。
季語:梅の花・春

 

木枯らしの果てはありけり海の音

 池西言水
ごうごうと吹きすさぶ木枯らしがおさまってみると、遠く海の方から音がするが、木枯らしは海に入っていったのだな。
季語:木枯らし・冬

 

秋風の吹きわたりけり人の顔

上島鬼貫
秋風がそよそよと、野道を行く人の面を吹きすぎることであるよ。
季語:秋風

 

目には青葉山ほととぎす初鰹

山口素堂
初夏には、目にはみずみずしい青葉若葉が、耳にはほととぎすの鳴く声が聞こえ、味覚としてはおいしい初鰹が賞味できる。
季語:青葉、ほととぎす、初鰹・夏

 

越後屋に絹さく音や更衣(ころもがへ)

榎本其角
更衣の季節になり、越後屋では、そのために仕立て者をする人がつめかけ、絹の布をさく音がさかんにする。
季語:更衣・初夏

 

下京や雪つむ上の夜の雨

野沢凡兆
状況では雪が降り積もっているが、下京では人家も多く、明るい灯が流れ、積もった雪の上には、夜の雨がふっていることだ。
季語:雪・冬

 

十団子も小粒になりぬ秋の暮

森川許六
東海道宇津の山の名物の十団子も世のせちがらさとともに、だいぶ小粒になった。秋の暮の寒さとともにわびしさがひとしおだ。
季語:秋の暮

 

梅一輪一輪ほどのあたたかさ

服部嵐雪
寒梅のつぼみが1つひらいた。その可憐な一輪を見つめていると、冬といいながら、近づいてくる春のあたたかさを感じる。
季語:寒梅・冬

 

 

 

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