●パンダと言ったら中国
やがて、日本語学校の仕事をはじめました。そこで、大勢の中国人と出会いました。
日本人の中国人に対する印象は、今でこそ悪いイメージがくっついてしまいましたが、それ以前からも、中国人はたくましい、みたいな印象があったと思います。心臓に毛が生えたような、たくましく、気が強く、攻撃的で、何でもズケズケ本当のことを言う。謙遜の国民性を持った私たちからすると、ちょっと付き合いづらい連中です。
私の学生たちも例外ではありませんでした。
ところが、日本の大学を目指す、そんな彼等も同じ人間でした。
大学受験が近づくと、非常に緊張し出すのです。
あたりまえですよね?
遥か数千`離れた異国の地で、激しい競争倍率の大学受験をし、勝負をかける。
アルバイトと学業の苦しい生活を送ってきて、いよいよ勝負の日!激しい不安と緊張に押しつぶされそうになります。そんな心は世界共通、人類共通です。
そんな、強いプレッシャーで今にも泣き出しそうな中国人学生にパンダを描いてやりました。そして、『合格』の2文字の下に『世上无難事、只怕有人心。(意志があれば難しいことなど何もない)』と書きました。
いい歳こいた大人が?
いや、緊張をほぐす、張りつめた心を癒すのは、世界共通です。
子どものようにはしゃぎ、とても喜んでくれました。
そして、お守りがわりに受験会場へ持って行ってくれました。
筆記試験開始前、面接待ちの時、パンダを見つめていたそうです。
そして、合格しました。
慶應義塾大学・商学部に。
それ以来、話を聞いた学生が、お守りがわりに『描いてくれ!』『描いてくれ!』と言ってくれます。また、言わなくても押し売りで描いてやります。
…そうです。
受験生たちを合格へと導く『合格パンダ』になったのです。
そんなわけで、外国人、特に中国人だからと書いた合格パンダでしたが、今では、日本人受験生たちにも受験前日に描いてやります。テーマを聞いて、そのテーマでパンダを描き、受験のメッセージを書いてやる・・・。湯島天神の受験鉛筆に書いてあるような言葉ばかりですが。
漢字テストで、入試で、このパンダたちは大活躍です。
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